8/20/2013

平成25年度 東京都の待機児童数 自治体比較

毎年7月末に、東京都が都内の保育サービス状況を発表しているのだけれど、平成25年度4月時点の状況も7月23日付で発表された。
都内の保育サービスの状況について|東京都
このページの下に、資料として表が別添されていて、その中で各自治体の数値が「※表4 区市町村別の状況(PDF形式:173KB)」にある。

データを見ると、待機児童数のみならず、保育サービス利用児童数、就学前児童人口データもある。
これらを使って、いろんな角度からデータを見てみた方が、より正確(?)な自治体比較になるんじゃないかと、これらのデータを使って、様々なグラフを作成してみた。
※あくまで私個人の見解でダウンロードして切ったり貼ったりしたデータなので、途中でコピーし間違えたりしているかもしれません。ご了承ください。

待機児童数のカウントに関しては、各自治体で基準が異なっているようだ。
数え方次第で「待機児童」が半減する? - 太陽のまちから - 
待機児童がゼロになった、と報道があった横浜市も、別の自治体の基準でカウントすると必ずしもゼロにはならないらしい。ゼロを達成するために、その基準を変えることもあるんじゃないかと疑ってしまう。
基準の異なるデータを比較して、どこの自治体がより保育園に入りやすいかと検討するのは正直言って意味がない。

というわけで、待機児童数以外のデータも含めて、下記参照いただければ幸甚です。

待機児童数(実数)

平成25年度 待機児童数 各自治体比較 - 戦わない子育て -
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区部と市部にパートを分けて、多いほうから降順に並べてある。
母集団が少ないので、島しょ部は省略させていただいた(すみません)。
報道にある通り、世田谷区が884人で一番多い。ダントツである。

待機児童数前年比

平成25年度 待機児童数前年比 各自治体比較 - 戦わない子育て -
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こういった資料があまり出てこないのだけれど、平成24年度との比較である。
この1年で各自治体が待機児童解消のためにどれだけがんばったかがわかる。
100人以上減らしたのは、八王子市東村山市足立区のみであった。
逆にいえば、昨年度100人以上待機児童がいなければ達成できないので、素晴らしい自治体かどうかはこれだけでは何とも言えない。

実数ではダントツだった世田谷区も、増加数では5位であり、増加率は12%程度である。
増加数・率ともトップは杉並区。保護者の抗議行動に関するニュースは記憶に新しい。ただし、この杉並区は平成25年度から待機児童数のカウント基準を変更したのだ。
待機児童数、数え方変え3倍以上に 東京・杉並区
昨年度までと同じ基準でカウントすると、実数94人で増加数は42人となる。

保育サービス利用児童数

基準がなんだかあいまいな待機児童は置いておいて、次に保育サービス利用児童数の比較。
冒頭の「東京都の保育サービスの状況について」ページの説明によると、
※認可保育所・認証保育所・認定こども園・家庭的保育事業・定期利用保育事業・区市町村単独保育施策の利用児童数合計
だそうである。こちらの方が基準としては使えそうな気がする。
平成25年度 保育サービス利用児童数 各自治体比較 - 戦わない子育て -
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こちらも世田谷区がトップではあるが、ダントツというほどではない。
1万人を超えているのは、世田谷区・足立区・練馬区・江戸川区・大田区・八王子市の6自治体である。
逆に言うと、千代田区は保育サービス利用児童数がそもそも900人程度しかいないので、待機児童が900人出ようもない。

保育サービス利用児童数前年比

こちらも平成24年度との比較。
各自治体がどれくらい増員したか。
平成25年度 保育サービス利用児童数前年比 各自治体比較 - 戦わない子育て -
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待機児童数でも保育サービス児童数でもトップだった世田谷区は、こちらもトップ。増員しても増員しても、待機児童がなかなか減らないのがこれでよくわかる。
900人以上枠を増やしたにもかかわらず、900人近く待機児童が出るのだ。
区長始め、職員ががっかりするのもよくわかる。

また、前年比率でみると、渋谷区が光っていた。母数が少ないのであまり目立っていないが、サービス利用児童数3,100人を超え、昨年度から400人以上増員したようだ。

就学前児童人口

最後に、各自治体にどれだけの就学前の児童が住んでいるか、というデータ。
資料によると、どの自治体も就学前児童人口の30~40%程度が保育サービスを利用しているようだ。
そう考えると、保育サービス利用児童数との相関関係が見て取れる。
平成25年度 就学前児童人口 各自治体比較 - 戦わない子育て -
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3万人以上抱えているのは、世田谷区・江戸川区・練馬区・足立区・大田区の5自治体。
4万人を超えているのは世田谷区のみ。6歳未満だけで4万人なんて、世田谷区は規模が大きすぎる…
一番小さな千代田区は、2,500人弱。

就学前児童人口前年比

前年比で見ると、東京都区部への人口流入がいかに多いかはよくわかる。
平成25年度 就学前児童人口前年比 各自治体比較 - 戦わない子育て -
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こんなに待機児童が多い、と訴えているにもかかわらず、世田谷区では900人以上人口が増えている。
待機児童数なんて、転入にはあまり影響ないんだろうか。
比率でいえば、千代田区が149人プラス、前年比6%でトップ。昨年度待機児童ゼロが効いたのだろうか。そのせいか、今年度、とうとう千代田区も4人待機児童が出た。

目立つのは、江戸川区の人口減少である。先の東日本大震災でかなり被害を受けたようであるが、その影響だろうか。800人も減少したが、それでも江戸川区には3.5万人以上の6歳未満児童が住んでいる。

まとめ

私にまとめる力はないのだけれど、まとめがないことには収集がつかないので、感想など。

「待機児童数」なんて簡単に言うけれど、各自治体で母集団がまったく違う上で実数のみを比較するのでは全く意味がないということだ。
世田谷区は働く親と子供のことはまったく考えていないような書き方をしている報道もあったようだけれど、本当にデータをひっくり返して検証したんだろうかと疑わざるを得ない。
また、待機児童数が少ないからと言って、自治体が努力しているとは必ずしも言い切れないし、そこへ引越せば保育所に入れるという保証もない。そもそも、待機児童数のカウント方法が統一されていないのだ。

データはWeb上に公開されていて、誰でも閲覧することできる。丁寧にトレースしていけば、もっといろいろなことが分かるに違いない。
もっと別角度からグラフを作ってみたら違った発見もあるかもしれないので、こんなグラフが欲しい!と思いついたことがあればコメント欄にお願いします♪
それから、やろうと思えば各自治体の平成20年からの経年変化グラフも作成することができます。
もし希望があって、私に時間があれば、作ります。

[付表]
平成25年1月時点の東京都の各自治体の人口も調べてみた。
「東京都の統計」というサイトに「住民基本台帳による東京都の世帯と人口 平成25年1月」というページがあり、Excel形式でデータをダウンロードできるようになっていた。
第3‐1表 区市町村、年齢3区分別人口(人口総数) Excel97 43KB
この中で、14歳以下人口だけをグラフにしてみた。
上記待機児童データと比較するには、3ヶ月タイムラグがあるので参考程度に。
平成25年1月 14歳以下人口 各自治体比較 - 戦わない子育て -
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※すみません、グラフのタイトルが「平成25年度」になっていますが、「平成25年1月」の誤りです。画像を修正するのが面倒で、そのままです…
世田谷区は10万人に届きそうな勢いである。14歳以下だけで10万人…
次は同前年比。
平成25年1月 14歳以下人口前年比 各自治体比較 - 戦わない子育て -
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江東区が3,600人超でトップ。6歳未満人口で800人の減少が見られた江戸川区は、14歳以下で見ると1,200人増えていた。うーん、原因がよくわからない。
震災で江東区と江戸川区に液状化の被害があったらしいので、昨年かなり減って、今年になって戻ってきたのかもしれない。すみません、ただの推測です。

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